矢部川のチスジノリ

矢部川でチスジノリの生育が確認されたのは1985年で,船小屋のゲンジボタル発生地を調査していた河内泰之氏が紐状の長い藻類があることを右田清治氏に伝え,1986年1月に右田氏が現地を調査した.このとき,緑ヶ丘ホテル・船小屋共和国(旅館)の下で約10株のチスジノリが確認された.船小屋橋から木橋(可動歩道橋)にかけて水深20−100 cmのところにある径10 cm以上の丸石に着生している1000株前後の個体が観察された.南筑橋の下には見られず,沖端川取水堰(松原堰)付近でも30−50株が生育していた.
 その後,一時生育が見られず,1990年末から1991年はじめには船小屋橋から上流400mの範囲で約300株が確認され,その多くは雄株であった.また,南筑橋から矢部川橋の間のせせらぎをなす場所で雄株ばかり約50株が観察された.松原堰付近には見られなかった.
 1992年以降は詳しい調査がなされなかった.
 2001年末に船小屋橋の橋脚付近と,下流の堰の近くでチスジノリが生育しているのが観察された.
 船小屋橋が架け替えられて,旧い橋の取り壊し工事の影響が懸念され,筑後川河川事務所の管轄下でチスジノリ分布調査が行われた.2003年2月の調査では,広瀬堰魚道から名鶴堰までの間で,船小屋橋下の堰の下流でわずかに3株のチスジノリが観察されただけであった.
 2004年3月には旧橋は撤去され,橋脚の上部も取り除かれた.この工事にも国土交通省福岡国道事務所・筑後川河川事務所の関係者が大きな関心を持って当たり,橋脚基部の撤去作業を計画するための3月上旬の調査では,新船小屋橋の上流200m前後で最大25cmのチスジノリ12株,旧船小屋橋の橋脚付近で2株,堰の下流で1株の合計15株を観察することができた.
 20年前の1985年ころと比較して,矢部川のチスジノリは著しく減少している.これからもチスジノリが生存し続けられるように,各方面の配慮を期待している.
                                (吉田 忠生)
2004年3月矢部川船小屋端付近のチスジノリ,カワモズク属の生育状況(筑後川河川事務所)